晩白柚ルポルタージュ

熊本に住む30歳の独身男性が旅行・キャンプ・カレーについて語ります

天空のアンコール

2017年9月12日

時刻は11時。朝食を機内食だけで済ませていた僕は、昼を前にして早くも腹が減ってきました。アンコール・ワットへ行く前に何か食べさせてくれないか、とサマスさんにお願いしたところ、アンコール・ワットの参道前に並ぶレストランへ連れて行ってくれました。

とにかく暑い。まだ昼前だけど、ビールで喉を潤したい‥。

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そう思って、缶ビールを一杯。この先ひたすら飲むことになる、アンコールビールです。

早速カンボジア料理を食べるのだ、と意気揚々にメニューを見ます。英語の料理名が添えられた写真達が一様にに並んでいますが、一体どれがどんな料理なのか見当もつきません。こういう時は、店員にオススメを聞くに限ります。注文したのは「ルック・ラック」というカンボジア料理。牛肉を甘辛いたれで味付けしたものに、目玉焼きが乗っています。

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初めてのエスニックなアジア料理、ということで少し構えていましたが、自然な味付けでとても美味しいです。僕の苦手なパクチーも、この料理には入っていませんでした。観光客向けのレストランなので少し値段が高いような気がするものの、とりあえず満足でした。

腹を満たし、いよいよアンコール・ワットの中へ入ります。

アンコール・ワットは、12世紀初頭にスールヤヴァルマン二世によって建設された、ヒンドゥー教のピラミッド式寺院です。中心部分へ辿り着くまでにいくつもの回廊があり、独自の宇宙観を表現しています。

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特に第一回廊は、ストーリー性を持ったレリーフがずらりとならんでいて、「地球の歩き方」片手にそのストーリーを解読しながら進めば、非常に興味深いものとなります。

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しかし、僕は暑さに完全にやられてしまって、地球の歩き方を読む気も全く起きず、視界に入るデバター(女神)像やレリーフを「へえ‥」と何となく確認しながら、ふらふらとアンコール・ワットの回廊を彷徨いました。

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兎にも角にも、アンコール・ワットは広いです。歩いて見て回るには、十分な時間を確保したほうがよいでしょう。しかし、何はなくともこの暑さです。そして、缶ビール1本とはいえ、アルコールが入った身。僕は誰もいない回廊の影に、思わずへたり込んでしまいました。

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2時間ほど寺院の中を歩いた後、アンコール・ワットを出て、敷地の外に停めたトゥクトゥクの中で涼んでいるサマスさんと合流しました。

「どうだい、アンコール・ワットは」

「ビッグ、ビーッグテンプルですね。全て石で作られている。インタレスティング」

稚拙な英語で感動を表現します。

これから先で訪れる全てのアンコール遺跡を通じて感じる興味深いことは、12世紀(日本では鎌倉幕府が始まろうかとしているような時代)に、これだけ壮大な寺院が石材を持って建造され、しかし壁面などの彫刻類には高い精密性があり、同じ時期の日本の建造物とは全く違う趣向が見られるということです。日本の寺社といえば基本的に木造ですから、今までに見たことのない建築様式は非常に刺激的です。

 

アンコール・ワットには十分満足したかい。次は、アンコール・トムに行くぜ」

アンコール・ワットとアンコール・トム、名前が似ていますが、前者が一つの寺院を指すのに対して、後者はいくつもの寺院を含んだ街と言ってよいでしょう。アンコール・ワットの後、ジャヤヴァルマン七世によって造営された巨大な都城です。特に、アンコール・トムの中心部に位置し、観世音菩薩の巨大な顔のモチーフがいくつも連なる寺院「バイヨン」が有名です。

「いいかい。この道を真っ直ぐ行くと突き当りがバイヨンだ。そこからこちらへ戻ってくる途中にバプーオン、ピミアナカス、象のテラス、ライ王のテラスがある。俺はここの駐車場で待ってるから、ゆっくり見て、終わったらここへ戻ってくるんだ」

バイヨンは、とにかく顔・顔・顔だらけの寺院です。どの菩薩も微妙に微笑んでいて、温かい気持ちになれます(そもそも暑いのですが)。

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アンコール・トム内には数多くのお猿さんが生息していて、バイヨンの中でもうろうろ徘徊しています。

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バイヨンから歩いて5分ほどのところにバプーオンがあります。ピラミッド式の寺院で、かつては50メートルほどの高さを誇っていたとも言われているそうですが、今は見る影もありません。

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バプーオンを出たところに広がるのが「象のテラス」。石造りの壁が遠くまで伸び、その壁にはいくつもの象のレリーフが彫られています。

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象のテラスのすぐ北に位置する「ライ王のテラス」。高さ6メートルの壁一帯に神々の像が彫られ、なかなかカオスなテラスとなっています。僕は後になって知ったのですが、三島由紀夫がこのテラスに着想を得て「癩王のテラス」という戯曲を発表していて、巷では割と有名なスポットのようです。

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象のテラスから西側に進むと「ピミアナカス」。これもバプーオンと同じピラミッド式の寺院です。バプーオンより規模は小さめ。

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一通り見終わって、駐車場に向かうと、食堂や売店が並んでいます。あまりの暑さにへとへとだった僕は、おばちゃんが元気よく客引きをしている屋台で、コーラを1ドルで買いました。おばちゃんがこれみよがしにココナッツやパイナップルを売りつけてこようとしたのが、何か大阪のうるさいおばちゃんが思い起こされるようで、微笑ましい。

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サマスさんと合流して、時刻は15時。今日の締めくくりは「タ・プローム」へ行くことに。

タ・プロームへ行く途中、道路を挟んで向かい合う2つの小さな寺院「トマノン」「チャウ・サイ・テボーダ」の前で止まり、サマスさんがアイスキャンデーを買ってくれました。ココナッツ味で、普通に美味い(何故か、何度写真を撮っても、後ろのサマスさんのバイクにピントが合ってしまう)。

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タ・プロームは、寺院の様式美を見るというより、自然の脅威を目の当たりにして驚く、というようなスポットです。寺院のあちこちで「スポアン」という木の根が絡みつき、建物を侵食しています。そのスケールはまさに圧巻の一言です。

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観光客の誰もがスポアンの前で写真を撮っています。

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カンボジアでは、いたるところで犬がぐったりと寝ているのを見かけることができましたが、確かに彼らがもう動きたくないと思わずにはいられないほどこの土地は暑く、僕もまた、早くゲストハウスに戻ってベッドに横たわりたいと思っていました。

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ゲストハウスまで送ってもらったところで、

「明日も俺が案内してやろう。何時に迎えに行けばいい?」

とサマスさんが言うので、

「あのー、僕、アンコール・ワットで日の出が見たいんですが」

と言うと、

「日の出?もちろんいいぜ。でも、場所取りのために朝イチで行かないと駄目だな。4時半だ。4時半にゲストハウスへ迎えに行く」

よ、4時半‥。いくらなんでも早すぎじゃないか‥。しかしサマスさんの言うことなので、きっともっともな事なのでしょう。了承し、その場は解散。長い灼熱の一日目が終わりました。

 

何はなくとも、まずはこの汗にまみれた体を洗い流さなければ。ドミトリーの一画に備え付けられた、恐ろしく汚いシャワールームに飛び込み、蛇口をひねります。出てくるのは、当然ながら、水。お湯は出ません。もっとこう、勢いよく出てくれればよいのですが、ややもすれば止まってしまうのではないかというほどの水圧です。しかも、水道管が古いからなのか、出てくる水はひどく錆臭い。体からどうも錆の臭いがして、洗った気にならないのですが、致し方ありません。

 

新しいTシャツに着替え、とりあえず気分だけはリフレッシュできたので、夕飯を食べに繰り出すことにします。お目当ては、地球の歩き方に載っていた大衆食堂「リーリー」です。タケオゲストハウスから歩いて5分ほどのところにあります。

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飾り気のない店内ですが、多くの客で賑わっています。地元の住民らしき人たちもいれば、近くに日本人宿があるのか、日本人の団体客もいて、日本語が聞こえてきます。地球の歩き方に載っているぐらいですから、観光客に優しい店なのでしょう。

メニューに目を通すものの、相変わらず何を注文すればよいのかさっぱりわかりません。近くにいる女の子の店員におすすめを聞いてみると、「ホワイトヌードルスープ」と「パッタイ」。ホワイトヌードルスープは、米の麺で作られたカンボジアのラーメンのようなもの、パッタイはタイ料理でおなじみの焼きそばです。麺と麺がかぶってしまうな‥と思いつつも、せっかくおすすめしてくれたのだ、と両方注文することに。アンコールビールももちろん忘れずに。

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ホワイトヌードルスープを一口すすってみると、レンゲを持つ手が一瞬止まりました。この香りは間違いなくパクチーだ!僕はパクチーが本当に苦手で、カンボジアで過ごす上での不安要素の一つがこれでした。

しかし、

「‥‥あれ?パクチー、うまい!」

驚くべきかな、パクチーの本場においては、パクチーの香りが前面に押し出てくるのではなく、ほのかなアクセントになっている程度なので、むしろパクチーの存在が心地よく感じられるのです。もっともっと、このスープを飲んでみたい、そんな気分にさせてくれます。もちろんパッタイも美味。このリーリーというお店には大満足して、この日以降も2回訪れるほどになりました。

 

翌朝は4時半出発。長旅の疲れを癒やして、明日に備えなければ‥そう思って、軋んだベッドに横になりました。暑さにやられた体から疲れがどっと溢れ、すぐに意識が遠のいていきました。

 

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